A-2とは?歴史と特徴
1931年 それまでのフライトジャケットを覆す画期的なライトゾーンモデル「A-2」が登場します。
何が画期的だったのかと言えば、ボタン式だったそれまでのフライトジャケット(A-1など)に対して、A-2ではファスナー式を初採用。これにより機能性が飛躍的に向上し、後のL-2に続くフライトジャケットのスタンダードとなりました。
しかし、A-2が他の飛行服と比べて格別にフューチャーされている理由はそれだけではありません。
第二次世界大戦時に活躍したA-2ですが、終戦後 本来軍に返却しなければならないにも関わらず、紛失扱いにして持ち帰ってしまうパイロットが続出しました。
これはA-2の画期的で洗練されたデザインもさる事ながら、パイロットにとってのA-2とは一人前の証であり、誇りであり、宝物であったからです。
この様な背景からA-2は「キング・オブ・フライトジャケット」として多くのファンとパイロットに愛され、1988年には念願の復活。空軍を象徴するフライトジャケットとして再び表舞台に登場しました。
どれが本物?A-2の見分け方
ファッションの世界でも多くのデザインに取り入れられているA-2ですが、その分「A-2テイスト」のジャケットも多く存在します。
商品名がA-2となっていてもよく見ると「ん?なんか違うな…」なんて事もしばしば。
という事で、ここではファッションではなくミリタリーな目線から見た、本物に忠実なA-2のポイントを紹介します。
TALONジッパー
フライトジャケットの世界では「ジッパー」が非常に重要なアイテムになってきます。
中でもA-2と言えば「TALONジッパー」
マニアが良くクラウン…とかコンマー…とか、謎の呪文を呟いているのは全てジッパーのメーカーなんです。(A-2のジッパーはタロン以外にもコントラクターや年代によって様々なメーカーがあります。)
もちろん性能面ではYKKが圧勝ですが、当時そんな高性能ジッパーを付けたフライトジャケットなどなく、アホらしいと分かっていながらジッパー1つで違和感を覚えてしまうのです。
背面の一枚革
これも良くあるポイントですが、A-2は贅沢に背面一枚革になっています。
これが”A-2風”だと2枚、3枚に分割されてたりします。更に有名ブランドでも背面にアクションプリーツ(肩の切り込み)なんかがあって、正面はA-2だけど背面はG-1みたいなのが結構多いです。
襟元のホック
A-2と言えば何と言っても大型の襟!
ちょっと細かい所がおかしくてもこの襟は特徴的にデザインされている事が多いです。
因みにA-2には台襟付きと台襟無しがあるのでどちらも正しいカタチです。
話を戻して忠実なレプリカの場合、A-2の襟元はホックになっています。ボタン留めではないので要チェックです。
ポケットのデザイン
横からも手が入るパッチポケット!A-2風で1番多いのはコレかも知れません。
A-2の特徴的な大型パッチポケットですが、そもそも手を突っ込めない様に出来ています。
これは「選ばれし航空隊が手を突っ込むなんてだらしない!」って事で、ついつい手を入れてしまうサイドポケットを付けなかったのだそう。
更にポケットで良くあるのが表面に剥き出しのボタンがある事。正式にはフラップの内にあってボタンは外から見えません。コレが経年変化で表に浮き出るのがカッコいい!
ちょっと特殊な仕様
レッドシルク
戦闘で5機以上を撃墜したエースにのみ許された、ライニング(裏地)を真紅のシルクにした特別仕様。
これは決してアメリカ軍の規定などではなく「ゼムケズ・ウルフパック(ゼムケの狼群)」と呼ばれ恐れられた第56戦闘航空群が士気向上の為行ったもの。
因みに赤いのは「これは軍服だ!」と言い張って自前の派手な格好で暴れまわった西部開拓時代の軍人「カスター将軍」の赤いスカーフから。
赤リブ
リブの色はコントラクターによって様々ですが、中でも目立つのがこの「赤リブ」。濃いシールブラウンとのコントラストが抜群に格好良く、これもまたちょっと特殊な仕様となっています。エアロレザー社が代表的。
実名復刻ラベル
A-2に限らずフライトジャケットやビンテージアイテムには「実名復刻ラベル」というモノが存在します。
簡単に説明すると当時のコントラクターから「再現度高いから社名使っていいよ!」と許可を受け、契約を結ぶ事でタグを当時のオリジナルと変わらぬ実名で再現出来るというもの。要は本家からのお墨付きです。
A-2の魅力
A-2の魅力は尽きませんが、中でも特徴的なのは豊富な種類と懐の深い着こなしやすさ。
ここでは、コントラクターによるA-2の特徴と代表的な着こなしを紹介します。
各コントラクターの比較
A-2の魅力の1つに「コントラクター」による仕様の違いがあります。
コントラクターとは請負業者。つまり当時A-2を作っていたメーカーです。
ミルスペックというベースは共通ながらも、このメーカーによってディテールに様々な違いがありました。
ここでは、代表的なコントラクターと特徴的な仕様を紹介します。
ラフウェア社
威厳のある軍服らしい襟が特徴のラフウェア社製A-2。アームやボディなど全体的にタイトフィットに作られている為、スタイリッシュでファンも多い。
エアロレザー社
赤リブと呼ばれる特有のニットパーツが特徴的なエアロレザー社製A-2。パッチポケットが他のメーカーに比べてやや小さく、外側に離れた作りになっている。
J.A.デュボウ社
A-2を手掛けたコントラクターの中でも美しいシルエットの「J.A.デュボウ社」
カーブを描いた独特の襟が特徴的。
ペリースポーツウェア
襟元をはじめ、丸みを帯びた各部が特徴の「ペリースポーツウェア」社製。少数派ながら独特のカジュアルさに惹かれる者も。希少なゴートスキン仕様。
スタースポーツ社
ペリースポーツウェアと同様に、そもそもはスポーツ衣料を製造していたメーカーの1つ。マニアの中でも密かな人気を集めていたスタースポーツ社製A-2は、シャープな襟や袖付け仕様など、スポーツウェアメーカーである事に関係するのか他社とは少し違ったデザインになっています。
モナーク社
大戦中のアメリカ初となる「1日で5機撃墜を成したパイロット」にして、人類史上初めて音速を突破したテストパイロット「チャック・イェーガー」氏が着用していた事で知られるモナーク社製A-2。
よく目にするのは上記5メーカーが多いのですが、他にもケーブルレインコート、クーパーなどなど、コントラクターは数多く20社程あったと言われています。
A-2のコーデとサイズ選び
A-2の着こなしで遥か昔から正義とされているのが「タイトフィット」です。
これに従いパツパツのA-2を自分の身体の一部の様にして育てて行く着こなしが多いのですが、そもそもフライトジャケットは「ジャストサイズがタイトフィット」になる様に作られています。
なので、せっかくのジャストサイズをワンサイズ下げて意図的にタイトフィットにする必要はありません。
もちろん流行りのMA-1の様にルーズに着たいならオーバーサイズもOKではないでしょうか。あまりカッコいい例を見た事がないのでおすすめはしませんが、マッカーサー元帥はルーズでもカッコ良かったですね。
A-2のコーディネート
どんな服装でも合わせ易いA-2ですが、絶対外さない王道3パターンを紹介します。慣れないうちはこれらを起点に色々試すと楽しいです。
1.オックスフォードとチノパンA-2
出展:http://blog.mushmans.com
個人的に最も好きなのがこのオックスフォードとチノパンを合わせたスタイルです。濃いカラーが多いA-2には白シャツが似合いますね。
もちろんシャツはインしてギャリソンベルトなどのちょっと太めのバックルを。
ベタですが靴はレッドウィングのベックマンも合わせ易いです。
2.ワーク系とA-2
出展: https://nari39morii555.wordpress.com
これも非常に好きなワーク系とのコーディネート。ストンと落ちるワークパンツのシルエット、そしてストライプがシンプルなA-2のアクセントになってカッコいいです。
ワーク系はダックパンツやベストを合わせたりして楽しみやすいスタイルです。足元はエンジニアが好き。
3.Tシャツ&GパンA-2
出展: https://www.buyma.com
Tシャツ&Gパンを合わせた王道アメカジスタイル。A-2のインパクトがあるのでこれだけでも充分カッコいいです。
足元はスニーカーにしてもOK、肌寒かったらパーカーやスウェット着ちゃうのも定番です。
最適な季節は?真冬やバイクでの使用
革ジャンでもあるA-2に対して「革だから暖かい」という印象がありますが、そもそもA-2の適応気温域はライトゾーン(10℃〜30℃)の夏季用フライトジャケットです。
身体を温める様な中綿などを備えていないウィンドブレーカー的存在なので、A-2が活躍する季節は春・秋程度と意外に少ないのです。
もちろん着込んだりする事である程度の調節は可能ですが、バイクとなると話は別です。
その防風性からライダーにも愛されるフライトジャケットですが、A-2の場合は着込んで秋までが限界。冬は寒くてとても着れません。(ただしこれをA-2の上にB-3を羽織って凌ぐ猛者もいます)
ただ、夏の場合は「暑いけどとりあえず怪我しない上着を一枚…」って時に活躍します。かなり暑いですが。
体感的にストレスなく着るのであればA-2は春・秋がベストです。
A-2おすすめブランド
アヴィレックス
米軍指定のコントラクターとして創業したルーツを持つ「AVIREX」のオリジナルA-2。
台襟付きモデルをベースに柔らかなカウレザーでリーズナブルに仕上げてある。
バズリクソンズ
素材から製法まで当時のフライトジャケットを徹底して再現する「バズリクソンズ 」
バズで人気のA-2と言えば実名復刻ラベルの付いたラフウェアモデル。バスの中では比較的リーズナブルで、ベジタブルタンニン鞣しによる経年変化も楽しめる。
モーガン(中田商店)
日本の老舗ミリタリーショップ「中田商店」が手がけるブランド「MORGAN MEMPHIS BELL」通称モーガン。
WWⅡモデルを再現して素材はホースハイド、ジッパーはタロンという徹底ぶりながら他の追随を許さないリーズナブルさを実現している。
BillKelso mfg
日本ではまだまだマイナーながらも近年界隈を賑わせているギリシャの新興ブランド。
徹底したクオリティーと再現度でイタリアンレザー品評会で優勝し話題をかっさらった。
トイズマッコイ
それまでになかった忠実なレプリカを引っさげ、A-2型ブルゾンで溢れる当時の日本に現れた「ザ・リアルマッコイズ 」
今では残念な事に倒産してしまったが、その創設者の1人である岡本氏が立ち上げたのがトイズマッコイ。パッチが特徴的なG-1から王座を奪った映画「大脱走」のヒルツ大尉着用モデル。