ミルスペックとは?
ミルスペックとは”Military Specofication“の略である。
日本語にしてみると「軍事仕様書」と言ったところ。
このミルスペックは軍が使用する全ての物に存在し、それぞれに事細かい規定を設けることによって同一の完成度で物を作る、という事を目的にしている。
その起源は南北戦争にまで遡り「戦場で壊れた銃を遠く離れた製造メーカーに修理に出すのはあまりに不便」という問題から、全ての銃を同一の規格で作り部品の調達・共有を簡単にした事がコトの始まりらしい。
何事にも「合理性」を追及する軍隊という機関は、兵士の嗜好品であるタバコにまで統一された規格を求めている。
タバコにあるならモチロン食事にもミルスペックがあり、例えばデザートのフルーツケーキに関しては18ページにも及ぶ調理書が存在している事は有名。
※第二次世界大戦中のコンバットレーション
全く関係のない話に思うかも知れないが、フルーツケーキでこの有様なのだからフライトジャケットのミルスペックなんてのはとんでもない。
ジャケットの素材からデザイン、裁断方法、縫い目の数からその間隔に至るまで綿密な規定があり、更にそれらを構成するボタンやジッパー、糸にさえミルスペックが存在しているのだ…
ミルスペックの見方
ミルスペックは補給や兵站を統括する部門が規定・決定を行い作成している。(例えば海軍では航空システム司令部が作る)
こうして出来上がったミルスペックを冒頭で「軍事企画書」と説明したが、実際我々の前に現れるのは「MIL-J-5391」と言った”数字の羅列”であり、見方を覚えないとサッパリ理解不能なモノなのだ。
具体的な例としてA-2フライトジャケットのラベルで解説しよう。
A-2のミルスペック
1.制式名称
モデル名が記載されている。
2.ドローイング番号
A-2という製品を規定する番号。
製作会社がどこであれ、必ずA-2のラベルには「NO.30-1415」の記載がある。
3.契約番号(コントラクトナンバー)
コントラクト=納入業者の番号。
この記載の場合は「発送番号W535をAC-23380がお届けしました」的な事が書いてある。
4.製造会社
「ラフウェア社」が製造した記載。
5.会社所在地
6.所有権
このジャケットは「陸軍航空隊」に所有権があるとの記載。
因みにこのモデルは”プロパティー・エアフォース”の表記が義務付けられた1942年契約分の為、急遽2段ラベルで対応している。
変化するミルスペックの規格と表記
以上のミルスペックの表記は製品毎に異なる上に、年月と共に変化していく。
最新技術をいち早く取り入れ日々進歩していくミリタリー用品では、材質やデザインが変化して行き、それによってミルスペックも新たに設定される。
例えば先ほどのA-2の後継、L-2のラベルを見てみると表記が全く異なっている。
まず最上段にライトゾーン用のジャケットである事を表す”JACKET.FLYING.LIGHT“が追加されている。
更に3段目には”MIL-J-5391“と、ミルスペック番号が記載されており、4段目には調達番号、サイズ表記の下6段目にはストック番号の記載など、A-2のラベルと別物になっている。
しかも近年ではインチ表記だったサイズがS.M.L表記に変わってたりする。
こうして刹那的とも言える頻度でコロコロと変化していくミルスペックだが、これをあえて解読し「同一規格の完成品」を作ればそれはもう「本物のフライトジャケット」ではないだろうか?
後は袖を通すのが軍人かどうかという問題に過ぎない気がしてしまう。
そんな気にさせるレプリカブランドは流石である。