ムーブメントとは?
腕時計には大きく分けて2種類あります。
ゼンマイを動力とする「機械式」と、電池やバッテリーなどの電気仕掛けで時を刻む「クォーツ式」です。
機械式時計は、何百年も前から受け継がれてきた工芸品とも言える側面を持ち、クォーツ式は科学の進歩によって生み出された工業品とも言える時計。
クォーツ式は抜群の精度と扱い易さを誇り、ほとんどメンテナンスフリーで動き続けることが出来ます(寿命はあります)
一方機械式はメンテナンスや修理を怠らなければ末永く使い続けることが可能で、シースルーバック仕様であれば美しい機械の動きを楽しめます。
この2つを合理性から見たとき、「時を刻む道具」として優れているのはクォーツ式であり、それ以外の要素も楽しめる趣味性の高い時計が機械式となっています。
そして近年では、そのいいとこ取りを実現した「スプリングドライブ」と呼ばれる方式も登場しました。
機械式時計
小さな盤面に人の叡智を詰め込んだ、機械だけで時を刻む時計。
電気を一切使わずに動く機械式時計は、ゼンマイが元に戻ろうとする力を利用して小さなパーツ達が動き出し、その動力で1秒が刻まれる、全てが機械部品だけで構成された時計です。
熟練職人が仕上げた機械式時計は美術品の様に美しく、高級なものはステータスアイテムとしても人気があります。
オーバーホールなどを繰り返す事で末永く使える一方、修理やメンテナンスを怠るとその動きを止めてしまいます。
クォーツ式に比べ「手間のかかる」時計ですが、それもまた深みにハマると楽しいポイントであり、まるでペットを飼っているかの様な感覚に陥ります。
・手間をかければ一生モノになる。
・1日に数秒〜数十秒の誤差が生じる。
・3〜5年ごとの分解清掃に数万円。
機械式の仕組み
ゼンマイに蓄えられた動力が、2番・3番・4番車という歯車(輪列機構)を経て、その力を小刻みに放出するガンギ車やアンクルなどの脱進機、時間のコントロールを行うテンプ(調速機)へ伝えられます。
この仕組みは手巻き・自動巻き共通で、自動巻きはその上に、自動巻き機構とローターが追加搭載されています。
ゼンマイ→輪列機構→脱進機→調速機へと力が伝わる。
ガンギ車
テンプからの規則正しい動きを秒針・分針・時針が付いた歯車に伝える。
テンプ
ガンギ車を経て時・分・秒の各歯車をコントロールする重要な部品。1秒間に8回の規則正しい往復運動で精度を司る。
ローター
時計を振ったり動かす事で回転する自動巻き固有の部品。扇型の特徴的なビジュアルで、回転時の力を利用しゼンマイを巻き上げている。
クォーツ式時計
水晶と共に時を刻む現代時計
クォーツとはそもそも何かと言うと「水晶振動子」というパーツを指します。
ゼンマイの代わりに電池や光を動力源とし、水晶振動子(クォーツ)を高速で振動させ針を動かしています。
このクォーツの精度は抜群で、誤差が生じても月に15秒〜30秒程度。電波ウォッチやGPS時計なら10万年に1秒の誤差と言われています。
更に機械式に比べ部品点数が少なく、大量生産できるので価格もリーズナブル。衝撃耐性にも優れ、メンテナンスも簡単です。
しかし、電子回路が寿命を迎えると交換が必要となり、この時モデルが廃盤になっていたり部品の生産が終了していると正規ルートでは打つ手なし。
一生モノになるかどうかはメーカー次第となっています。
・価格がリーズナブル
・メンテナンスフリー
・時間が正確
・一生モノかは部品次第
クォーツ式の仕組み
ゼンマイの代わりに電気や光エネルギーを動力源として、水晶振動子とICで正確に時間をカウント、ステップモーターで時分と秒針を動かすのがクォーツ式の原理です。
電気→水晶振動子・IC→ステップモーターの順に力を伝える
水晶振動子(クォーツ)
電圧を加える事で1秒間に3万2768回の振動を行うクォーツは、機械式でいうとテンプに相当します。半永久的に振動すると謳われるものの、経年劣化により必ず寿命は訪れます。
IC
クォーツの振動を感知しカウントする電子回路。振動を高周波の電気信号に変換してステップモーターに流している。
ステップモーター(駆動コイル)
ICからの電気信号を感知して磁力を発生させる。その力で秒針・分針・時針に繋がるローターを回転させる。
スプリングドライブ式
セイコー独自開発の「第3の機構」
クォーツ式と同等の精度と機械式と同じゼンマイ駆動をあわせ持つSEIKO独自開発のハイブリッドウォッチ。ゼンマイの動力を電力に変換して水晶振動子が揺れ出すという構造原理。しかも自動巻きと手巻き式がラインナップされていて、精度と趣味性どちらも得る事が出来る!ただし機械式独特の”チチチチ…”といった駆動音は聞こえない。
機械式時計の種類
自動巻き
過去の最先端も今ではスタンダードに
ローターと呼ばれる半円形の部品が腕の動きによって回転し、ゼンマイを巻き上げる自動巻き方式です。名前からは手間を感じさせませんが、着用しないと止まってしまうため「めんどくささ」は充分。別途ワインディングマシーンなどを用意すれば、手巻きに比べ敷居は低いです。
手巻き
リューズを指で回してゼンマイを巻き上げる手動式の腕時計です。
自動巻きが普及する1950年代以前まで、時計と言えばこの手巻きが主流でした。(懐中時計なども手巻き)
自動巻きの特徴であるローターを必要としないため、機械の動きが見えやすく、薄くて美しいフォルムの時計になります。
エサを与えるが如く毎日ゼンマイを巻き上げる必要があり、更にこの巻き上げ方がゼンマイの寿命に関わるなど、敷居が高く、そして趣味性も高い方式です。
クォーツ式時計の種類
電池
クォーツ式で一般的なのがこのボタン電池による駆動方式です。
圧倒的な精度と機能性を両立し、大量生産が可能なためコストパフォーマンスも抜群。数年に一度の電池交換で動き続けるのでほとんどメンテナンスフリーに近いです。
ソーラー
太陽や蛍光灯の光で駆動するエコウォッチ。
最大の特徴はやはり電池交換を必要としない事で、5分も直射日光を浴びれば一日分の動力を蓄えられます。
技術の進化によりソーラーパネルも目立たなくなり、近年はGPSや電波ソーラーを採用したモデルも増加。最新技術を駆使したハイスペックウォッチを楽しみたい人に向いています。